名古屋で迎える初めての冬である。
ともかく寒さが身にしみる。
だから、体があったまる味噌煮込みうどんなどを食べるのだろう。別に馬鹿にしてませんよ。むしろ、味噌煮込みは好きですぞ。
週末に寒さが少しだけ和らいだので、寺を目指した。
荒子観音である。
全国的には、知られていない寺院だと思う。
全国的には、知られていない寺院だと思う。
だが、その筋の人は避けて通れない聖地である。
大仏師が多くの作品を残しているからだ。
大仏師が多くの作品を残しているからだ。
その仏師は江戸時代前期に美濃(現在の岐阜県羽島市)で生を受け、生涯で12万体の仏像を彫ったという。
そう円空上人である。
名古屋市中川区にある荒子観音には1255体もの円空仏がある。現存するものの4分の1ともいわれる。むろん最多である。
少し説明を加えると、円空仏とは、円空がそこらの木々を使い、なたであら彫りしたもので、穏やかな笑みをたたえる仏像は「微笑み仏」ともいわれる。とにかく多作なので、日本全国に円空仏は拡散している。北海道にも足を運んだというから驚き! その一つの聖地がここなのである。
裏手にわかりやすい看板があった。こんな感じの仏像なのだ。
お寺は下町情緒あふれる古刹といったところ。
いくら円空寺といっても、観光客などはいない。
ただ尾張四観音として名古屋では名をはせている。
面白いことにここには、名古屋で一番有名な寺である大須観音は入っていない。
話は毎度のこと脱線するが、
四観音とは由緒正しいお寺が襲名したもので、
かの徳川家康が名古屋城を起点に、鬼門の4つの方角に四観音を定めたのだという。(大須観音は江戸時代初期に美濃から移転したので歴史が浅い)
あと笠寺観音、龍泉寺観音、甚目寺観音とあり、節分では恵方(その年の吉兆が起こる方角)にある観音は、特に参拝客が多いのだという。ちなみに、笠寺観音→龍泉寺→荒子観音寺→笠寺観音→甚目寺観音と回り、2013年は笠寺観音だそうである。
729年創立といい、多宝塔は室町のもので名古屋市最古の重要文化財という。
多宝塔も大事だが、山門も素通りしてはいけない。
左右におられる仁王さんこそが円空仏。しかも現存するもので最大の3メートル強の作品である。
ただ、少し鑑賞しにくいのが難点。必死に格子窓に目を近付けるのだが、細部はうかがえども全貌はわからず。
ただ大きそうというイメージはできた。
あとの1200体は?
実はこの日は残念ながら拝めなかった。
第2土曜にしか公開していないとのこと。
ただそれは仏像界ではよくある仕打ち。
本堂の聖観音なんか33年に一度というから、これぐらい。
次の機会にお邪魔するとしよう。
お寺には参ったのだが、消化不良気味で悶々としていたそのとき、本堂に置かれていたチラシに目が行った。
真っ赤な字で「円空」とある。
センスがあるのか、ないのか。
なんと円空上人の映画が来年から公開されるというのだ。
またこれはすごいセレクトやなと。
心の中で拍手した。
空海や親鸞ですら、どうかなと思っていたが、円空とはやられた。
これなら運慶もやってほしいものである。
なぜ円空なのか?
これは初めて知ったのだが、円空は7歳の時川の氾濫で母を亡くしているのである。おそらくそれが出家と作仏の道に進むきっかけとなったのであろう。ただそこからは仏を刻むだけ。
これが映画になるのかな?
ちなみに1988年にNHKのドラマで丹波哲郎が円空を演じたらしい。あるHPによると、その翌年に「大霊界」というトンデモ映画に主演することになったらしいが…。
東日本大震災で家族を失ったかたへの冥福の意味もあるという映画「円空」。ぜひとも観たいものである。
荒子観音
名古屋市中川区荒子町宮窓138
地下鉄東山線・高畑下車で徒歩10分