よう、空石、
最近の俺のヒットはアニメの「蟲師」やな。以前からその名作ぶりを伝え知って
はいたが、深夜アニメであったそれは結構な話数だったので、時間がかかると
ちょっと敬遠していた。が、縁あって2週間ほど前から少しずつ見てる。
日本の誇るアニメ文化の表現力が結集している感じでとてもよい。原作が秀作
で、柳田國男が集めた民話はかくも、というような里に伝わる奇異な話が、人情
物語や切ない語りとして綴られる。一言でいえば「霊験譚」やな。今昔物語か、
宇治拾遺物語か。
勧善懲悪から遠く離れた仏教民話的な肌触りで、派手な話はひとつもないが、ベ
テランの演出陣の表現力と相まって、中々に胸を打つ。お主も時間があれば、ぜ
ひ1話1話と夜のお供に。
蟲師はええで。原作の幽玄たる感じは、俺は未読やが、漫画読みのベテランとし
てはだいたい想像できる。特に女流漫画家のセンスは抜群なので、ええ雰囲気を
出しているはず。
でも、アニメ版もええで。長濱博史というのが監督とシリーズ構成をやっている
のやが、この俺らより1歳上のおっさんが中々の才人でな。俺も子供も大好きな
「ギャグ漫画日和」の監督をしている大地丙太郎(NHKの「おじゃる丸」でも著
名)と仲が良く、「日和」の製作にも深く関与しているため、ぶっとんだユーモ
アセンスがある。そのテイストも含んだ上で、「蟲師」のようなシリアスものを
やるので、ええ感じの諧謔味が出ており、本来の「説話文学」に顔を覗かせる
ペーソス入りの切なさがよく演出されていて原作とはまた異なる味で面白い。
この長濱の監督作品で最近の話題作に「悪の華」(もちろんボードレールから来
てる)というのがある。アニメの方は俺はあまり見なかったが、原作がかなり切
れてるので、機会があればぜひ。青春の薄暗いエネルギーのマグマが、俺らの青
春とはまた大きく異なるが、「近森もこれ系の文学少年やったのかなぁ」などと
想像が膨らみ面白い。作者のどす黒さがええ。