バンコク紀行・ラストの巻(2017年12月・仏具街など)

タイに行く前に、なんのガイドブックを買うかで悩んだ。
「るるぶ」もいいけど、安定感は「地球の歩き方」なんだよなぁ。
こんなところがそそるんです。
 
124ページに「バムルン・ムアン通り」とある。
仏具屋街の説明がある。
こりゃ行かない手はない。
 
ひっきりなしに車が通るが、人は少ない。
雨も降ってきて、午後5時前に店じまいの雰囲気である。
 
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ただ、噂通りの仏具街である。
 
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日本だと、仏壇が全面に出るが、ここでは仏像である。
それも蛇が雨から修行するブッダを守るナーガ付きのものなどインパクトのある仏が店頭に並ぶ。
こんなお方ね。
 
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いいけど、これはどこに置くんだろう…。
 
冷やかしに何軒かのぞいたが、触手が伸びるものはなかった。
 
気分を変えて、今度は托鉢のための鉢をつくる工房街「ソイ・バーン・バート」を目指す。
こちらは、仏具街と違い、ちと見つけにくい。
通りからさらに、路地に入る。
 
え、看板はあるけど、これ人の家じゃない?
 
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そんな感じの裏路地を進んでいくと、町工場にも満たない作業場があり、そこに作りかけの鉢が乱雑に並んでいた。
 
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「鉢は売っていますか?」
 
おやじに聞くと、瞳が輝きだした。
 
薄汚れた棚から鉢をうやうやしく出して、「チーン」と鳴らしてくれる。
 
「いい音だろ?」
 
そんなことを言っていたに違いない。
 
「500バーツ(約1600円)だよ」とニコニコ。
 
音の善し悪しは、正直わからなかった。
だから、こんなものかと思い、400にねぎって購入した。
 
そしたら、おやじさんは大喜び。
自分のカメラまで持ってきて、「写真を撮ってくれ」ときた。
よほどうれしかったのだろうか。
 
ただ、初めて見つけた鉢屋で衝動買いしたもんだから、もっと奥も見たいとの衝動にかられた。
ただ、おやじが押しとどめる。
 
「奥に行ってもなにもないよ」みたいなに。
 
まあ、時間も時間だし、暗くなる前に帰ろうと引き返すと、おやじは通りまで送ってくれて、
名刺まで差し出した。
 
「またよろしく」ということだろうか。
 
しばらく歩くと、橋のたもとに高そうなケースに入った見事な鉢が陳列されていた。
はは~ん、やられたんだろうな。
ただ、すがすがしさが通り過ぎた。
 
おやじは、たまたま通りかかったわたしの気まぐれで幾ばくかの金を手にした。
別に彼は悪さをしているわけではない。
技術のすべてをつぎ込み制作した鉢を日本人に買わせた。
これもブッダのご加護である。
 
そう考えると、いいことをした気分にもなる。
 
寺に戻ろう。
バンコク滞在最後に訪れたのは、ワット・イントラウィハーン。
高さ32メートルの黄金仏を見るためである。
 
また路地に入ると、寺があったので、のぞくと、僧侶が集まっていた。
読経が始まったので、お祈りさせてもらった。
 
終わると、みなはスッーと家路につく。
取り残されたわたしは、黄金仏の場所を訪ねると、隣だという。
ん?
 
高層マンションの建築現場じゃないの?
 
ただ、よく見るとそんな感じもしてきた。
巨大ロボットの製造現場に見えなくもないが…。
 
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ただすべてがうまくいくわけじゃない。
4月に完成という新生黄金仏をまた拝みにくりゃいいじゃないか。
建築現場に一礼して、わたしのバンコク紀行は終わりを告げた。
 
家に帰り、新聞紙に包まれた鉢を取り出し、鉢をたたいてみた。
 
「カーン」
 
なんとも安っぽい音。
なんでわかるかというと、台湾で買った代物はもっと高くて、伸びのある音を出すのだ。
でももういっちょう。
 
「カーン」
 
安っぽいが、どこか憎めない音なのである。
 
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 (完)

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