いつもお世話になっているライターの方から、信じられない話をうかがった。
「寺好きやったよな? 神戸の山に朝6時から100人が集まるお寺があるんやで」
100人? 耳をうたがったが、確かに「100人」らしい。
ラジオ体操を行うため、寺の境内に集まるのだという。
にわかには信じがたいが、寺好きの血が騒ぐので、とにかく、行ってみることにした。
ラジオ体操を行うため、寺の境内に集まるのだという。
にわかには信じがたいが、寺好きの血が騒ぐので、とにかく、行ってみることにした。
とはいえども、六甲山の山寺に朝の6時は、根性なしの愚生には厳しく、
阪急・六甲の駅に到着したのは午前11時。そこから山を目指した。
阪急・六甲の駅に到着したのは午前11時。そこから山を目指した。
桜の季節は終わったが、代わって新緑が瑞々しく、すがすがしい風も心地よい。
と思ったのもつかの間、住宅地とはいえ、10分坂道を登ると、汗がにじみ、息も乱れてくる。
と思ったのもつかの間、住宅地とはいえ、10分坂道を登ると、汗がにじみ、息も乱れてくる。
こんな山道をものともせず、毎朝6時には登頂している猛者がいるんだものな。
くじけそうな心を奮い立たせると、川沿いの小道に十善寺の石碑が現われる。
くじけそうな心を奮い立たせると、川沿いの小道に十善寺の石碑が現われる。
ただ、ご注意あれ。目立つ表示は、駐車場を示すもので、右に行くと、参道から外れる。
石碑の左に目立たなく彫られている「参道」とある左手が正解。
石碑の左に目立たなく彫られている「参道」とある左手が正解。
拙者も右手からお邪魔したので、参道を歩き、寺が迫ってくるドキドキ感を逃してしまった。
とはいえ、駐車場なる空間からは別世界。境内を覆う木々が、住宅地との結界になっている。
こんな住宅地すぐに、本格的山岳寺院が存在する奇跡…。
山門をくぐると、これまた雰囲気がある本堂が目に入る。
こんな住宅地すぐに、本格的山岳寺院が存在する奇跡…。
山門をくぐると、これまた雰囲気がある本堂が目に入る。
こりゃいい!
さすがに、境内には100人の猛者はおらず、愚生ただ一人のみである。
新緑がキラキラ。実に季節に来たものぞ。
新緑がキラキラ。実に季節に来たものぞ。
ただ十善寺の魅力はこれで終わらない。
本堂に向かい、左手を見るとこじゃれた茶店がある。
これぞ、驚がくの朝6時からオープンのモーニングカフェ「もみじ茶屋」なのだ。
しかも、オーナーがいい意味で変態である。
藤田さんは、関西の某ラジオ局の人気番組のディレクター。
本堂に向かい、左手を見るとこじゃれた茶店がある。
これぞ、驚がくの朝6時からオープンのモーニングカフェ「もみじ茶屋」なのだ。
しかも、オーナーがいい意味で変態である。
藤田さんは、関西の某ラジオ局の人気番組のディレクター。
「会社でやろうということになり、僕もカフェならと」
なんとも進んだ会社である。
しかし、藤田さんは軽く言われるが、なんせ朝の6時である。
聞けば、家は遠く三木市というではないか。
バイクを飛ばすこと約40分。風の日もあろう。雨の日もあろう。
聞けば、家は遠く三木市というではないか。
バイクを飛ばすこと約40分。風の日もあろう。雨の日もあろう。
もっと言えば、二日酔いのときもあろう。
そんな艱難辛苦を踏み越えて、十善寺で朝カフェののれんを用意するのだ。
100人の善男善女のために。
そんな艱難辛苦を踏み越えて、十善寺で朝カフェののれんを用意するのだ。
100人の善男善女のために。
なんたる功徳ぞ!
しかもイケメンやぞ。
しかもイケメンやぞ。
店内は、10人程度で満員になりそうだが、境内のどこでも休めそうなので問題はないのであろう。
特に、今の季節ならば、新緑を楽しみながらの珈琲もオツであろう。
コーヒーだけやない。
カレーやオムライスなど、どうやって一人でさばくんだろうと、心配になるほどメニュー豊富である。
特に、今の季節ならば、新緑を楽しみながらの珈琲もオツであろう。
コーヒーだけやない。
カレーやオムライスなど、どうやって一人でさばくんだろうと、心配になるほどメニュー豊富である。
さらに驚いたのは、店内にあったお寺の由緒書き。
これが超マニアックなのだ。由緒書きというか、歴史書の厚さである。
これが超マニアックなのだ。由緒書きというか、歴史書の厚さである。
「歴史好きの広告代理店の方がいて、趣味で作られたそうですよ」
創建以来の歴史が、時代ごとに区分けされている。
十善寺は、1057年の創建とあるが、織田信長の時代には、戦乱で兵火にかかったという。
それが、NHKに出てくるような精緻な合戦図と一緒に説明されている。
十善寺は、1057年の創建とあるが、織田信長の時代には、戦乱で兵火にかかったという。
それが、NHKに出てくるような精緻な合戦図と一緒に説明されている。
「本にされたほうがいいですよ!」
思わずうなった。
見てみてください。ホント城や戦国好きなら、誰もがそう思いますよ。
見てみてください。ホント城や戦国好きなら、誰もがそう思いますよ。
気づけば、12時。藤田さんは本業? があるとのことで、拙者も失礼させていただく。
ただ、このお寺まだ終わらない。
ただ、このお寺まだ終わらない。
山門隣に時代風の瀟洒な建物がひっそり立ってある。
「昔からあるんですけど、毎日登山の方のためのお堂なんです」
お寺の方が説明してくれた。
そして、「ヨイショ」と木版の掛け金を外すと…。
そして、「ヨイショ」と木版の掛け金を外すと…。
ギョ!
「登山した回数を記入していくんです」
これがうわさの毎日登山の実体か…。
軽やかな感動にうちひしがれた。
先の先達から話には聞いていた。
軽やかな感動にうちひしがれた。
先の先達から話には聞いていた。
「神戸には毎日登山って風習があって、中には1万回登ったって人もいるんやで」
ホントに毎日登っても27年かかる。これは荒行ではないか。
オシャレな風体で、やるやんけ神戸人!
1万回登ると、表彰されるらしい。20歳で初めても表彰されるのは、50前になる…。
そのモチベーションたるや、恐るべし。
1万回登ると、表彰されるらしい。20歳で初めても表彰されるのは、50前になる…。
そのモチベーションたるや、恐るべし。
私もその1万分の1の御利益にあやかろうと、実際に登ってみた。
本堂の裏から、小道が山頂に向かっている。
山道沿いには、石仏が並んでいる。
88体もあり、1周すると、88箇所を巡礼したことにあるという仕組み。
寺までの住宅地の坂道と違い、緑の坂道は心地よい。
本堂の裏から、小道が山頂に向かっている。
山道沿いには、石仏が並んでいる。
88体もあり、1周すると、88箇所を巡礼したことにあるという仕組み。
寺までの住宅地の坂道と違い、緑の坂道は心地よい。
ゴール手前に、奇妙な石碑があった。
これ、沖縄の聖地・斎場御嶽(せーふぁーうたき)にあったやつと同じやん。
円の向こうは、かすんで見えないが、高野山の奥の院があるという。
円の向こうは、かすんで見えないが、高野山の奥の院があるという。
聖地をのぞむ遥拝所である。
内地的ミライカナイである。すがすがしい気持ちで下山。
あと9999回。
多分無理やな。いや、絶対無理!
内地的ミライカナイである。すがすがしい気持ちで下山。
あと9999回。
多分無理やな。いや、絶対無理!
十善寺
神戸市灘区一王山町12-48
阪急・六甲から徒歩20分
☎078-851-7869
神戸市灘区一王山町12-48
阪急・六甲から徒歩20分
☎078-851-7869