プロローグ~そうだ知多へ行こう

12月30日。【納め地獄】の季節とあいなった。…またもや、今年も。

改めて説明をしておくと、われわれMONKフォーラム一同は、誰に頼まれるでなく(ここが大事!)、年越しに寺参りをすることにしておる。平たく言うと、初詣なのだが、そこは仏友と新年の一計をぶつので、場所の選定からかの地で何をするかの計画まで、それはそれは慎重に考える。2015年は、われらが取り組んできた「福島に笑い仏をとどけよう」プロジェクトが、お盆でフィナーレを迎えることになる。そこで、高校、いや中学時代から慣れ親しんできた「弘法大師・空海」というキーワードは避けれんなぁと考えておった。原点回帰という意味でのぅ。

そう。「八十八カ所にしよう」と思い至ったのだ。

八十八カ所といっても、四国ではない。それを模倣した霊場巡りが日本全国にあるのだ。「~銀座」みたいな呼称が各地の商店街で用いられているのと似ていようか。そして、東海地方もその一つ。知多と呼ばれる土地がある。愛知県で南に突き出た半島である。中部国際空港があることでも知られておる。

【知多四国八十八カ所】は、四国八十八カ所を何度も走破した、もう「八十八か所オタク」と呼んでも差し支えないレベルである尾張藩の亮山老師によって、1824年に定められた。本場のものが四国を巡り、総行程約1400キロなのに対し、こちらはちとこぶりで、194キロとかなりお手頃。距離が短いとはいえ、悪路ゆえに細々と歩かれたらしく、道路が整ってきた日清戦争以降から、ようやく巡礼者が増加したという。まずは、開創について非常にうまく描かれた漫画があるので、ぜひお読みいただきたい: 「知多四国はじめて物語

そうと決まれば、まずはわし、空石の自宅近くの名古屋市は興正寺に向かった。なぜって?まぁ、それは形から入るためやな、ぶっちゃけ。「お遍路グッズを売っておる酔狂な店はないものか…」とHPで探すと、あったのよ。遍路グッズを売っている仏具店を見つけた。こういう店は、何だかんだと言ってもシニア層には不可欠なんだと、少し感心した。白装束と菅笠を購入。われながらミーハーだとは思ったが、ちまたではやりのご朱印帳だけは買わなんだ。ここだけは、本末転倒のにわか仏教徒と一線を画すプライドよ。こちとら、ガチの仏教マニアですから。

というわけで、年末年始の家族との団らんを爽やかにスルーした(「常日頃にがっちりイクメンしていると、こういうときに問題なく動けるのよ、フフフ」とは彼の弁)、MONK共同創業者である仏友が東京から馳せ参じ、そこにわが妻を加えた「同行三人」(と言うのか?)を決め込み、第1番札所へと向かったのだ。

最初の一歩、豊明市の曹源寺である。ジャンパーの上に、少々きつめの白装束を羽織り、菅笠をかぶる。知多半島とはいえ、まだ付け根の辺りでしかない。都会風情を残す住宅地で、この出で立ちは異様ですらあった。駐車場で遊ぶ子らには怪奇なる何かを見たかのような目でを震え上がられながらも、本堂を目指した。

pic chita 1ban

ただ、この格好が意外に肝なのである。菅笠をかぶり、ぼそぼそと声を発すると、何と、空海のお声が聞こえてくるではないか!えぇぇええ!?まじでか!?…いや、種を明かすと、自分の声が、笠に反響して、返ってきているだけなのだが。しかし、妙にくぐもっており、とても自分の声とは思えない。これが、特に遍路道で疲れた身体状況の時には、プチトランス状態を作り出す。仏友にも菅笠をかぶると、彼は目を輝かせて思いつきの自説を披露した。

「つまり、これは遍路道を1人で歩いたときに、つぶやきが自分に戻ってくるように作られてるンとちゃうか。これこそ正に、『同行二人(いつも空海と一緒という意味)』の科学的な解明やでぇ!」

pic chita henro outfit

…なるほど、そういうことか。確かに、1人で1400キロも歩くとなると、かなり心細くもなる。そんなときに、孤独の中にも、ふとした独り言で、空海と対話している気になり、苦行を乗り越える助けになるということだろうか。ゆえに、遍路道を行くときには、菅笠をすすめる。そして、予断だが、四国遍路のことをてっとり早く知りたい向きには、ぜひ以下の漫画をオススメする。

しまたけひと「アルキヘンロズカン」である。

遍路というと、最近の仏教ブームで、「ちょっといけてる」とか、オシャレとかいう向きもあろうが、そんな甘い妄想をぶち壊してくれるのがこの名作である。実際に、この本で多々書かれているようなイベントもあるんでっせ。でも、やっぱりそれでも行く価値はあるよ、という遍路ガイド漫画なのだ。上下巻とあるが、興味がある人は一気に読めること請け合い!

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