世田谷観音の門をくぐるとき、
大きな提灯が目に付くであろう。
提灯の少し前でしばし、立たれい。
そして、手を打つのじゃ。
「ぽちょん」
洞窟の水音のような済んだ音が反響する。
これぞ龍の鳴き声!
物理学的に説明すると、固い面の間で、短い音を発すると、
奇妙な音が反響する。フラッターエコーとかいうそうじゃ。
日光東照宮薬師堂のものもよく聞くであろう。
ずんずん進むと、本堂がある。ここがわしの借りの住まいじゃ。
だが、その前に、頭上を見られい。
またも龍じゃ。
見事すぎる彫りもの。わしもこれほどのものはあまり、記憶にない。
聞けば、福井城にあったもので、ボストン美術館に持っていかれたものを模写したという。
金沢の名工が造られたそうじゃ。
縁起のよい龍神さまに囲まれて、世田谷の逗留も印象深いものになりそうじゃ。