こんなところに、韓国の仏教! 後編(2019年7月・長野県安曇野市・金剛寺)

とんでもない韓国の仏を拝んだあとは、
とんでもない宿に泊まろう。
 
少しわかりにくいところにある。
レンタカーで同じところをぐるぐるまわる。
お寺に向かっているのだ。
いやほんと。金剛寺という宿坊である。
 
ようやくそれらしき細い小道を見つけると、
両サイドには瀟洒なペンションが並ぶ。
そして、金剛寺という看板を見つけて、左折。
突如として、極彩色のお寺が現出する。
 
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なにやら、日本の寺とは趣が異なる。
おわかりか?
金剛寺は韓国寺院の宿坊なのである。
太古宗という正真正銘の韓国仏教の宗派で、日本の総本山とある。
 
ただ「聞いたこともないし、連れ去られたら…」などと不安もよぎったが、
受付におられたご婦人は、韓国なまりのある日本語で丁寧すぎる応対をしてくれた。
 
ならば、わがミッションを遂行するまで。
実は、昨年に韓国を訪れた際、例によって寺院を訪れたのだが、
聞きたいことは山ほどあったのに、言葉がわからず、忸怩たる思いをしたのだ。
 
「日本語のわかるお坊さんなので、なんでも聞いてください」
 
喜び勇んで本堂に入ると、すでにガタイのいい僧侶が、法要の準備をしていた。
正面は韓国ならではの金ぴかのお釈迦様が鎮座する。
 
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まずは、礼儀と神妙に座ると、お坊さんは鐘を撞いたり、お経を読んだりと、
甲斐甲斐しく動き回った。
 
そして、鐘を「ボ~ン」と一発。
一連の法要が終わったころを見計らい、声をかけさせていただいた。
 
「いろいろ韓国の仏教のことを聞きたいんですが…」
 
「そうですか」と、優しい表情で受け入れてくれた。
 
簡単に韓国仏教のことを話しておこう。
韓国は儒教の国とされるが、ほとんどがキリスト教と仏教を信仰している。
仏教では、国家が認定している寺院の90%以上が曹渓宗(そうけいしゅう)とされる。
そして第2位の信徒を持つのが、この太古宗。ともに禅宗の系譜。
曹渓宗となにが異なるかというと、韓国は出家主義で妻帯を認めないが、
太古宗は、日本統治時代の影響を受け、妻帯を認めている。
よって、伝統仏教の流れをくみつつ、開宗は1970年と新しい。
さらにいうと、韓国でキリスト教が盛んであるのは、日本=仏教という構図もあり、
アメリカ=キリスト教という戦後政策で、仏教が弾圧された時期があったからである。
 
さて、韓国僧侶との対話が幕を開けた。
 
まず彼は、赤い袈裟を見やすく広げてくれた。
 
「韓国では第2の仏教ですが、この赤い袈裟は僧侶の古来からの伝統を受け継いでいるんです」
 
深い意味まではわからなかったが、それなりの彼らのプライドであるらしい。
 
禅宗でも、太古宗は師匠との対話を重視する看話禅なのだという。
 
「日本でいうと、臨済宗に近い教えです」
 
ソウルご出身というお坊さんだが、日本のこともよく勉強されている。
 
韓国寺院では、お賽銭をそのまま仏に供えるのではなく、
コメを買い、それを仏に捧げる。ここもそのようで、入り口にはコメが売られていた。
 
「意味は功徳を積むということ。韓国のお寺は山奥にあることが多く、
田を耕すことができません。だから、コメを供えることがお寺にとり、
一番ありがたいこととされてきたんです。
だから、コメが供えることが一番功徳を積むとされるんです」
 
あと、韓国では女性の僧侶も多いように感じた。
どうしてなのであろうか?
 
「韓国の尼僧は多いと思います。
それには、韓国社会の考えも説明しなければなりません。
日本でもそうかもしれませんが、女性は男性に比べ、
シャーマンのように霊的な力を持つ方が多くおられます。
ですが、韓国でそういう方は、言い方は悪いですが、差別されることが多い。
ですが、僧侶になると、逆に尊敬される。
だから出家するという女性が、韓国では多いのだと思います」
 
朝の法要は午前5時からとある。
 
「早いですか? 韓国では4時が普通なので、僕は日本で楽をさせてもらっていますよ(笑)」
 
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確かに、さきほどの鐘が午前4時に鳴ったら、近所は迷惑以外のなにものではない。
そういう意味で、韓国寺院として、周辺住民とはうまくやれているのだろうか?
 
「日本の方もよく本堂にも来られますし、
土地を守ってくれていると思ってくれているみたいですよ」
 
韓国仏教は日本と違うところも多々あるが、相違点も多い。
まずは、若者の仏教離れである。
 
「出家する人は確実に減ってきています。
なので、われわれもマインドフルネスなどを使った布教も積極的に行っています。
昔は、絶対ダメでしたが(笑)」
 
これは日本の寺院と同じ状況であろう。
禅では、少し敷居が高いが、アメリカのIT企業も活用するマインドフルネスということならば、若者も敷居がグッと低くなる。
韓国仏教界も同じ課題に直面しているのである。
 
でも、驚くのはここまで親切に対応してくれるお坊さんである。
ここまで教えてくれる僧侶は日本では珍しいように思う。
 
興味深いお堂がある。
 
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韓国には、本堂の奥に三聖閣というところがある。
ここには、仏様ではなく、民俗信仰的要素の強い神さまが祀られている。
中心神は、七星神で北斗七星を現わす。
山神は山岳信仰、独聖はインドの聖者とされる。
日本でいうところの神仏習合のような感じである。
 
いやぁ、長野で韓国仏教を満喫した。
 
「あした、5時からもおりますので」
 
笑顔でお辞儀をしてくれたが、私の表情は硬直した。
 
女将は宿坊のことをいろいろ教えてくれた。
格安というメリットもあるが、韓国寺院では日本人は選びにくいのでは…。
 
「海外のお客さんが多いですよ。東京から直接レンタカーで来たりしてね。
みんなネットからの予約。スキー客が多いかな」
 
翌朝、本堂ではさきの僧侶とおばさまが話し込まれていた。
 
「私は宝塚から来ました。わざわざ?
これほど立派な韓国のお寺はここだけだから」
 
遠方から来た在日の方も泊まられていくのだそうだ。
僧侶はこんなことも話していた。
 
「韓国ではテンプルステイ(寺院での宿泊)というものがあるんですけど、
それを始めたのは、この寺の住職なんです」
 
そうなのか!
このように心地のよいものならば、
韓国のテンプルステイとやらも悪くない。
 
 
 
 
●金剛寺(宿坊 成穂院)
  長野県安曇野市穂高有明7552-73
  JR大糸線・安曇追分から車で約10分
  ☎0263-83-3662
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