隠れたところにこそ神は宿る(2017年3月・鹿児島市・花尾念仏洞)

五木寛之のでビビらされたことがある。
「隠れ念仏と隠し念仏」
 
隠れキリシタンという言葉は聞いたことはある。
だが、「隠れ念仏」とはいかに?
これこそが忘れられた日本の哀しき黒歴史なのである。
以下は本の受け売りである。
1597年、薩摩を治める島津義久は、一向宗を既成権力の敵として徹底弾圧した。
苛烈さは、キリシタンのとき以上ともされた。
1843年の弾圧で処罰されたのは、14万人と、本願寺の歴史にある。
その生き証人を鹿児島市内の本願寺鹿児島別院で見ることができる。
 
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涙石という。
この巨石を正座する信者の足に置き、役人が自白を迫った。
こんなもの置かれたら、確実に骨が砕け散ります。
ご婦人も「隠門」に縄を通されるサディスティックな拷問が行われたという。
だが、過酷な弾圧にも関わらず、信者は信仰を守ろうとした。
それを物語る遺構が、鹿児島市中心部から車で30分走った山間にある。
 
枯れ木がまだ目立つ3月初旬だからであろうか。
車を進ますにつれ、心細くなってくる。
そんな田舎道から、そっと外れた細道を行くと、「念仏洞」というバス停がある。
 
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ファンシーな感じがしないでもないが、ここがこれまで隠されていた遺構の入口だ。
 
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看板がなければ、どう見ても登山道。
そして本当に登山道なのである。
 
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はじめにここを発見した方は、いかにそれを知ったのであろうか。
 
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説明が遅くなった。
花尾隠れ念仏洞とは、薩摩藩の弾圧から信仰を守るためにつくられた祈祷所である。
まさに洞窟である。
 
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説明文にガマとあるのは、沖縄にも多くある自然にできた洞窟のこと。
ただ身をかがめなければ、奥に入れないほどのスペース。
 
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沖縄にあるガマに置かれた祈祷所のような明るさは皆無で、
ただただ隠れて、信仰を守る闇の祠である。
怨念のようなものが立ち上がっているようでもある。
ここをみるだけで、いかに当時信仰を守ることが大変であったかがわかる。
見つかったら殺される。
だから見つからないところで阿弥陀様に祈りを捧げる。
命がけである。
 
ではなぜ島津家がここまで一向宗を弾圧したのか?
諸説あろうが、彼らが年貢を藩主ではなく、本願寺の本山に仕送りしていたからであろう。
ならば、本願寺にも多少の罪はある。
彼らは少ない布施だったかもしれないが、
こんな拷問を薄々知りながら、それを受け取っていたということになる。
 
「もうお布施は結構だから、自分たちの信仰だけを守ってくれ」と言ってやれなかったのか?
暴論を承知で申すと、憤りさえ感じる。
 
そんな怒りさえ吹き消すほどの静寂をこの念仏洞は、われわれに突きつける。
そしてそれは恐怖に変わる。
 
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まだ日が暮れる時間ではないのに、木々が覆い尽くしており、夕方でも暗い。
逃げ出すように帰路についた。
 
入口にノートがあったので、御礼の言葉を綴った。
私の前の訪問者は、3カ月も前である。
そんなところが、花尾隠れ念仏洞であった。
 
だが、五木の地獄の釜をのぞき込むような物語はこれで終わっていない。
「隠れ念仏」だけでなく、「隠し念仏」なるものが存在するというのだ。
1文字の違いに、大きな差異がある。
「隠し念仏」は本願寺の本山にさえも知られず信仰されてる念仏形態である。
本願寺の教団でさえも、異端を意味する異安心と名付け、無間地獄に落ちるとまでしている。葬式なども禅宗などほかの仏式で済ます。
その後信者のみで再び集まり、〝本当〟の葬式を行う。
そのために僧侶など呼ぶのだから、徹底している。
そこまでやるのだから、実のところあるのや、ないのや実のところわかっていないことも多いという。
「おまえ隠し念仏ちゃうか?」などと詰問したところで、「何ソレ?」としらばっくれられるのが関の山であろう。
「ある」といったところで実際には表に現われてこない。
知るということは、仲間になることなのであり、〝完全黙秘〟が礼儀になるのであろう。
だから当の五木とて、「そういう話があるのを聞いた」と、伝聞の形式でしか書いていない。
 
真の信仰はこのように、人知れず受け継がれていくのかもしれない。
 
 
花尾念仏洞
 鹿児島市花尾町
    JR鹿児島中央からJRバス・花尾神社前より徒歩20分
   *鹿児島中央駅から車で30分
   ☎099-216-1327(鹿児島市観光振興課)
 
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