思えば遠くに来たもんだ(2015年5月・北海道札幌市・弘法寺)

武田鉄矢主演の映画のタイトルではない。
だが、舞台の秋田県角館よりさらに遠い北海道にいる。
いわゆる北の大地だ。
気温が違うし、風が違う。

とはいえ、こんなところだからこそ、寺を訪れたいと思うのが人情?
知人のお坊さんに電話をすると、グーグル並みの即レス返事だ。

 

「OKです。手配しときます」

 

お寺ネットワークというものはすごい。仏縁は、日本全国どこにでもつながっている。ペラペラのフェイスブックとのつながりとは違う。濃ゆい関係性ぞ。頼もしく、うらやましいぞよ。

訪ねたのは、JR札幌駅から少し東にある弘法寺というところ。
通りから少し入ったところにはあるが、見間違うはずがない。正面からして、弘法大師全開なのだ。

 

 pic hokkaidou1

 

北海道のお寺に行きたいと思ったのは、その地域性にある。
おおざっぱな知識として、北海道仏教の歴史は、本土に比べて当然遅い。本格的に仏教が根付いたのは、明治期に屯田兵らが土地を開墾していった頃からであろう。文化が遅れていたというわけではない。そこには、アイヌという立派な文化を持つ民族が暮らしていたのだから。さて、札幌最古とされる寺院の創建は1867年とされる。明治維新のわずか1年前。そこには必ず独自性があるはずだ。

住職は菅原文太を快活にした感じの、彫りの深いお元気な御仁だった。62歳には見えない。現役でアイスホッケーをやられるというから恐れ入る。

 

「ここは大正13年(1924年)から始まったんだ」

 

霊感が強い祖母が、ここで祠を建て、仏像を祀ったのが最初だという。そこから建物を拡張して、今日の立派なお寺になったという。

 

 pic hokkaidou2

 

「昔は電話がなくて、電報でしか知らせが来なかったんだ」

札幌の電話開通は、1900年ということらしいので、一般家庭はそのようなものであったか。何せ、ゼロからの開拓なので、並々ならぬ努力がお寺のために注ぎ込まれたことは、想像に難くない。頑丈そうな建物に感心していると、また教えてもらった。

 

「木造の寺なんて、北海道にはないぞ」

 

言われてみればそうである。われわれは、夏のお気楽なシーズンにしか、札幌に行かない(もしくは冬のスキー場だけ)。だが、当然ながら、冬にもなれば、どかどかと雪が降ってくる。頑丈な造りでないと、押しつぶされてしまうわな。そのため、このような鉄筋柱のお堂ができるわけだ。だから、こんな話もある。日本最初のコンクリート製の寺院は、1907年に北海道の函館でつくられた。東本願寺函館別院だ。

http://www.hakobura.jp/firststory/2011/07/post-7.html

ならば、次のことも合点できる。

 

「上も見ていくかね」

 

3階に通されると、ロッカーのようなものが整然と並んでいた。
実は、これが納骨堂というのだ。

 

「冬はお墓がどこにあるかもわからないから、こういう建物の中に、納骨堂があるのが、北海道には多いのよ。ここでみんなお参りをしていく」

 

実に合理的! 失敬ながら、風呂場の脱衣場に見えないこともないが、過酷な大自然を前にしては、生半可な見てくれなど、どうでもござれ! 北海道は、英国からアメリカへの初期の移民がそうであったように、実利第一、合理主義だったと思われる。だから、お寺が機能的に作られている。

このお寺の特徴に移ろう。弘法と名の付く通り、真言宗である。
さらにいうと、醍醐派である。これが、弘法寺の骨格でもある。
階段には、ご住職の火渡りや滝行の写真が飾られている。
つまり、修験道である。説明すると、醍醐寺は、当山派という修験道の総本山。ほかには、天台宗に本山派という流派もあり、これが二大修験道の流れである。つまり、修験の流れをくむお寺である。

ご住職の元気みなぎる風貌のもとは、修験道にヒントがあるらしい。

 

「火の上を渡ったり、滝に打たれたり、そういう行もある。
わしは、細い焼けた棒を握って、隅から隅まで通すことをやったぞ」

 

荒行である。無論、常人がやれば、手のひらが焼けただれること必至である。

 

「こつがあるんでな」

 

あったとしても、お断りする。どうしても知りたい御仁は、当山派の門を叩くがよいであろう。
滝行は、本土で行っていたものかな、と思っていたが、そうではないらしい。札幌の中心地から南に、国営滝野すずらん丘陵公園というのがある。何とも家族が和気あいあいと過ごしていそうな名前だが、ここにその滝がある。鱒見の滝といって、鱒が滝を見上げたことから名付けられた。その落差たるや、18メートル。多分、見上げた鱒が、昇るのを諦めたんだな。常人は1分浴びるだけで、まいってしまうという。写真で見ると、人間などアリンコ同然。寒そうである。そして、痛そうでもある。そこに弘法寺の南別院もある。

 

「こつは水と一緒になることだよ。そうすれば、寒いとか、痛いとかないだろ」

 

こともなげに、住職は笑うが、達人の道は険しそうである。
大自然と闘い創建した北の大地の寺。恐れ入りました!

 

弘法寺
北海道札幌市中央区北2条東10丁目
電話011-251-1448

 

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